アイスコーヒーをめぐる些少な冒険。

 

 アイスコーヒーを日に3杯くらい飲む。季節問わず飲む。朝はアイスコーヒーを飲みながらぼんやりする事から始まる。

 数年前からコンビニで淹れたてのコーヒーが100円で買えるようになってから重宝している。それまでは缶コーヒー一択だったのでその風味と深みのある味わいに少し驚いた。

 その昔缶コーヒーといえば砂糖入りのミルクコーヒーのことを指していた。 UCCやサンガリアなど。味はコーヒー風味の甘い飲み物といった感じであった。缶入りブラックコーヒーの登場はずいぶん後になってからだ。

 今ではペットボトルの容器に詰められたブラックコーヒーも売られている。少量づつ飲むには都合が良い。キャップを回せばこぼさずに携帯できるし値段の割には量が多くてお得だ。日本にいる限りアイスコーヒーの入手にはまず困らない。コンビニが近くになければ自販機で売っている。だが外国に於いてはその限りでない。 

 ふた昔前の初夏の頃、ひと月程仕事で中国に滞在していた。北京 上海 杭州 広州など。

 滞在中アイスコーヒーを求めてウロウロしてみたが見つけることが出来なかった。ホットコーヒーならホテルの朝食会場やラウンジ等に行けば飲める。だがこちらが欲しいのは冷たいコーヒーなのだ。コンビニに置いてなく、自販機を探すも自販機そのものを見掛けなかった。

 上海では外国資本のハンバーガーチェーンに入って店員にIce coffee pleaseと告げると怪訝な表情をされた。発音に問題があったのかと思いIced coffee pleaseと言い直すとその店員は奥に引っ込んでしまった。まもなく責任者風の男が現れて何でしょうか?と英語で尋ねてきた。再度Iced coffee pleaseと言うと彼はふむ、とにこやかに頷き厨房に向かって中国語でオーダーを通すとこちらに一礼して奥へ去って行った。そして程なく出てきたものはコカコーラであった。

 中国で蛇口から出る生水を飲む者はいない。いるかもしれないが、渡航前に彼の地では生水を飲まないように忠告されていた。氷もダメだとか。

 滞在先のホテルで洗面台の蛇口をひねると薄く白濁した水が出てきた。なるほど、これじゃあ飲む気にならない。台の上にミネラルウォーターが2本置かれている。歯を磨いた後それで口を濯いだ。

  中国に限らず多くの国では飲料用の水は買うものだという認識があればアイスコーヒーが成立する事の難しさに思い至る。飲食店に入り黙っててもお冷やを出すのは日本だけだ。 

 この頃は日本以外ではアイスコーヒーは認知されていなかった、ような気がする。少なくとも中国では。

 ここ数年、世界の各地域でアイスコーヒーが流行っているらしい。

 この先、海外に行く機会があればアイスコーヒーにたどり着く事ができますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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