最近読んだ某新聞の編集欄にこんな記述があった。
戦時中に「国を護るため死んでも戦え!」と他人を鼓舞していた人物に限って敗戦が決まるやいちはやく雲隠れしだしたという。
編集氏の御祖母はかつてこう語ったらしい。
威勢のいい声に気をつけろ、と。
個人が集団と意見が違えば個人が負ける。
こちらが理を説こうと言葉を選ぼうが負かされてしまう。
集団側につく者の責任感など薄いものでありひとの言葉を遮るのはいつだって威勢のいい声だ。
その声に動かされて非情な行ないを為すのもひとの一面であることを覚えておいた方がいい。ひとは時に他人の命を軽んじる。
さて現在世界の命運は妄想の世界に入り込んでしまったであろう爺さんの手の中にある。
数年前にモスクワやサンクトペテルブルグで出会った人々を思い出す。彼らは私と同じ職種につきそれで生計を立てていた。仕事が終わると呑みながらたわいのない会話をした。同業だから話題は豊富にある。会話には困らない。
金を稼いで家族を養う。子供の事に一喜一憂し、この仕事は体が資本だとお互い労いあったり、日々を粛々と過ごしている至極真っ当な人達ばかりだった。
権力を握る者の心の闇は窺えしれない。
たったひとりの機嫌次第でひとが失われるシステムはまともではない。
このご時世、威勢の良い声には気をつけようと思う。
コメント